ドーマー条件
借金まみれでも大丈夫?お兄ちゃんに教わる「ドーマー条件」
ドーマー条件って、何かの呪文?

【ひより】
ねえ、お兄ちゃん。ちょっと教えてほしいことがあるんだけど……。
いまブログの記事を書こうと思って、ニュースや教科書を読んでるんだけど、「ドーマー条件」っていう言葉が出てきて。
これって、ファンタジーアニメに出てくる封印の呪文か何かかな? それとも、新しいスイーツの名前?

【智宏】
……ひより。君の頭の中は、いつもアニメか食べ物のことばかりだね。
「ドーマー」というのは、エブセイ・ドーマーという経済学者の名前だよ。
呪文でもドーナツでもない。これは、「国が抱えている借金(公債)が、将来的に破綻せずに維持できるかどうか」を判断するための、すごく重要な経済の指標なんだ。

【ひより】
ええ、そうなの? 借金の話かぁ……。
最近、ニュースでも「日本の借金は1000兆円を超えていて大変だ!」ってよく言われてるよね。
でも、その借金が返せなくなるのか、それとも大丈夫なのかをどうやって見分けるの?

【智宏】
それを説明するのが「ドーマー条件」だ。
数学的に言うと実はシンプルなんだけど、君にもわかるように噛み砕いてみよう。
まず、一番大事なのは、「名目経済成長率」と「名目利子率(金利)」のどっちが大きいか、という比較なんだ。
成長率と金利の「追いかけっこ」

【ひより】
えーっと、成長率と金利……?
お兄ちゃん、もう少し優しくお願い。私、数字が並ぶとすぐに眠くなっちゃうから。
ほら、お茶淹れてあげたから。これを飲んで、ゆっくり教えて?

【智宏】
……ありがとう、いただくよ。ちょうど喉が渇いていたんだ。
いいかい、ひより。これを「家庭の借金」に例えて考えてごらん。
君が100万円の借金をしているとする。
その借金には「金利(利子)」がつくよね。放っておいても借金はどんどん増えていく。
一方で、君の「アルバイト代(収入)」も、毎年少しずつ増えていくとする。

【ひより】
うん、借金が増えるスピードと、お給料が増えるスピードの勝負ってこと?

【智宏】
その通り。
「借金の利子で借金が増えるスピード」よりも、「経済が成長して収入が増えるスピード」の方が速ければ、借金の総額が増えていても、自分の収入に占める借金の割合は相対的に減っていくよね。
この、「経済成長率(g)が、利子率(r)を上回っている状態(g > r)」のことを、一般的にドーマー条件と呼ぶんだ。

【ひより】
なるほど!
つまり、借金が増えても、それ以上に稼げるようになれば、国が潰れることはないってことなんだね。
なんだか、ダイエット中に「食べた分以上に運動すれば太らない!」って言われてるみたいで、ちょっと耳が痛いかも……。

【智宏】
……ひより、最近またアイスを食べすぎている自覚はあるんだね。
まあ、その例えはあながち間違っていない。
もし、利子率の方が高くなってしまう(r > g)と、借金は雪だるま式に増えていって、いつか返せなくなってしまう。
だから、無理に借金を返そうとして経済を冷え込ませるより、「いかに経済を成長させて、成長率を金利より高く保つか」が大事だ、という考え方につながるんだよ。
プライマリーバランスとの関係

【ひより】
じゃあ、経済さえ成長していれば、どれだけ借金しても大丈夫なの?
なんだか、それってすごく楽観的な気がするんだけど……。

【智宏】
鋭いね、ひより。そこが次のポイントだ。
実は、ドーマー条件が満たされていても、借金が無限に増えていいわけじゃない。
ここで関係してくるのが、よくニュースで聞く「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」だ。

【ひより】
プライマリーバランス! 知ってるよ。
「国がその年の税収だけで、その年の政策経費をまかなえているか」っていうバランスのことだよね?

【智宏】
正解。よく勉強しているね。
仮に経済成長率が利子率より高かったとしても、政府が毎年毎年、収入を大きく超えるような無駄遣いを続けていたら、やっぱり借金の比率は上がってしまう。
ドーマーの理論をより正確に言うなら、「プライマリーバランスを均衡(ゼロ)に保っているという前提があれば、経済成長率が利子率を上回ることで、GDPに対する借金の比率は一定に収束する」ということなんだ。

【ひより】
うーん、つまり……。
「とりあえず自分の稼ぎの範囲内で生活する(プライマリーバランス均衡)」ことを守りつつ、「去年よりたくさん稼げるようになる(経済成長)」ことを頑張れば、昔作った借金は怖くないよ、ってこと?

【智宏】
論理的にはそういうことになるね。
多くの経済学者が「プライマリーバランスの黒字化」を目指すべきだと言うのは、借金の増加に歯止めをかけたいからだ。
でも、逆に「今は借金をしてでも経済成長のための投資をするべきだ」と言う人は、このドーマー条件を根拠にしていることが多いんだよ。
「今は借金が増えても、それで将来の成長率(g)が上がれば、結果的に借金問題は解決する」という理屈だね。
結局、日本はどうすればいいの?

【ひより】
お兄ちゃんの話を聞いてると、どっちも正解に見えてきちゃう。
今の日本は借金がすごく多いけど、結局のところ、この「ドーマー条件」は満たされているの?

【智宏】
そこが一番難しい問題だね。
今の日本は、世界的に見てもかなり特殊な状態なんだ。
ずっと超低金利が続いていたから、利子率(r)はすごく低かった。
でも、同時に経済成長率(g)もあまり高くなかった。
どちらか一方が劇的に勝っているわけじゃない、ギリギリの状態が長く続いてきたんだ。

【ひより】
あ、だからみんな「もっと景気を良くしなきゃ」とか「借金を減らさなきゃ」とか、意見が割れてるんだね。

【智宏】
そう。最近は物価が上がってきて、金利も少しずつ上がろうとしているよね。
もし金利(r)が上がったのに、経済成長率(g)がそれについていけなかったら、日本の借金問題はいよいよ深刻になる。
だからこそ、今の日本にとって「いかに健全な経済成長を実現するか」は、単に「景気を良くする」という以上の、国を維持するための死活問題なんだよ。

【ひより】
……なんだか、責任重大だね。
私も、ただ「増税は嫌だなぁ」とか「給料上がればいいなぁ」って思ってたけど、もっと広い視野で国の将来を考えなきゃいけないんだなって思ったよ。

【智宏】
おや、ひよりがそんな真面目なことを言うなんて。
明日は雪でも降るかな?

【ひより】
もう、失礼だなあ!
せっかくお茶のお代わりを淹れてあげようと思ったのに。
お兄ちゃんの分は、お湯だけでいい?

【智宏】
……冗談だよ。
君がこうやって興味を持って、自分で考えようとすること自体、将来の「日本の力」になるはずだ。
その意気込みを、しっかりブログに書くといい。
ただし、文章はもっと論理的に組み立てるんだよ?

【ひより】
わかってるってば!
お兄ちゃんの理屈っぽさを、私が柔らかくポップにして読者の皆さんに届けるんだから。
よし、キーワードは「成長(g)と金利(r)の追いかけっこ」。これで決まりだね!
まとめ:数字の裏にある「未来への期待」

【ひより】
最後に、私なりに今日教わったことをまとめてみるね。
- ドーマー条件とは、借金が持続可能かどうかの目安。
- 経済成長率(g) > 利子率(r) であれば、借金の負担は相対的に減っていく。
- でも、使いすぎ(プライマリーバランスの赤字)には注意が必要。
- 日本は今、このバランスの瀬戸際にいる。

【智宏】
完璧だ。
ちなみに、僕のアドバイスに対する対価として、今日の夕食の唐揚げは僕の分を一つ多めにしてくれるかな?

【ひより】
ええーっ! それは「支出の増加」だから、私の「幸福成長率」が下がっちゃうよ。
却下!……あ、でも、次のお休みにスシローに連れて行ってくれるなら、考えてもいいかな?

【智宏】
……結局、僕が「借金」をすることになりそうだね。
やれやれ、これじゃあ僕の財政状況は、いつまでもドーマー条件を満たせそうにないよ。
